「アイアントレイン」なる、世界一過酷かつ不自由な乗り物をご存知でしょうか?
アフリカの西の果て、モーリタニアという国にそれは存在します。
それは世界遺産でもなく、特段有名な訳でもありませんが、旅をする者にとっては極上の経験を与えてくれる、言わばアトラクションのようなものです。
「旅をしているけど、もっと刺激的な体験が欲しい!」
「日本では到底得られないような体験がしたい!」
と考える旅人の方に、是非紹介できればと思う次第でございます。
アイアントレインは、あなたの常識を超えたアドレナリン全開の時間を授けてくれること間違いなしです!
それでは、いきましょう!
アイアントレインに乗ろう
今回は、アイアントレインについてお話をさせていただきます。
トレイン=列車、にまつわる話です。
列車に乗ったらエキサイティングだったから、是非この感動を伝えたいと思い記事にしている次第です。
5年間世界を渡り歩いてきた僕の旅史上、これほどまでにワクワクとドキドキが入り混じった体験は、そうそうないものでした。
旅を何年もする中で、忘れかけていた未知の出来事への感動を呼び起こし、
「これだよ、これ!これだから、旅はやめられない!旅はこれがいいんだよ!」
と思わせてくれたのが、アイアントレインです。
アイアントレインとは
アイアントレインとは、モーリタニアの国内を横断する鉄道のことを指します。
アイアン(英語でiron:鉄)のトレイン(英語でtrain:列車)の意味でそう呼ばれています。
内陸部の主要な町・アタールから北に行った「シュム」から、沿岸部の都市「ヌアディブ」を繋いでいます。
両区間の距離は、地図にして約300km、時間にして10時間程のものです。
特徴としては、「その長さ直線にして2km」と信じられないぐらいの途方もない長さを誇っております。
一つの車両が15mぐらいのカーゴ車両になっており、それが何十何百と連なっております。
そんな長い列車がなぜ走っているのかというと、モーリタニア内陸部で取れる鉄鉱石を沿岸部まで運ぶ役割を担っているから、とのことみたいです。
アイアントレインには一応、「鉄鉱石用車両」と「客席車両」が分かれており、鉄鉱石用の車両に乗るのであれば無料で乗ることができます。(お金を払って客席車両に乗ることもできますが、大抵の旅人はせっかくだからと「鉄鉱石用車両」に乗ると思います。(笑)
アイアントレインの魅力
アイアントレインの魅力、それは、言葉にし難いその”冒険をしている感”にある言ってもいいでしょう。
正に、ドラゴンクエストで言う”村人に聞く”みたいなことをしないと、なにもわからない状況が待ち構えています。
アイアントレインには、時刻表もなければ、しっかりとした駅舎もありません。
何時に来るのか、どこで待っていればいいのか、そんなことも現地に行っても不透明で、あるのは、”その場所に行けば乗ることができる”と言った、不確かな情報だけです。
過去の方のブログを読んでも、時間などがバラバラで確かな情報を得るのも難しいものでした。
つまり、「なにもわからない」がたくさんあると言えばいいでしょうか。
単純にやることは「列車に乗る」と言ったシンプルなことですが、
「いつ来るんだろう?どこにいればいいんだろう?誰か知っている人いないの?」
そんな不安やドキドキが最初から最後まで我々を取り囲んでいる、その状況そのものが魅力に繋がっているとも言えるでしょう。
アイアントレインの乗り方
アイアントレインに乗るには、2箇所からのアプローチがあります。
2箇所と言うのは、海側の町から内陸側に行くか、内陸側の町から海側に行くか、の2点の違いです。
町でいうと、
・シュム(内陸部の町)→ヌアディブ(沿岸部の町)
か
・ヌアディブ(沿岸部の町)→シュム(内陸部の町)
の路線のどちらかです。
どちらから行くのかは、旅の方向次第になりますし、どちらから乗ったとしても、列車に乗ったというのは変わらない事実です。
ただ、2方向からの違いはあります。
・内陸部から沿岸部に向かうときは、鉄鉱石まみれ(鉄鉱石を運ぶため)
・沿岸部から内陸部に向かうときは、空っぽの車両(鉄鉱石を運び終わって、帰るだけ)
となっている点です。
アイアントレインは、内陸部で取れた鉄鉱石を沿岸部に輸送する役割を秘めているため、自ずとルートによって鉄鉱石の「ある・ない」が分かれます。
これは完全に個人の好みやそれぞれのルート取りに左右されるので、一概にどちらから乗るのがいいかを言うことはできません。
違いとしては、空っぽの車両は中でくつろいだりできますが、鉄鉱石は当たり前に鉱石まみれです。
個人的には、鉄鉱石まみれの中に乗ることをおすすめします。(要は、内陸部から乗ると言ったことです。)
アイアントレインに乗る際の注意点
アイアントレインに乗るときに注意すべきことは、服装と時間です。
あとは、(線路があり、電車が来るであろう)その場にいれば乗れるはずです!
まず服装ですが、寒さに備え、しっかりと防寒着を用意しましょう。
アイアントレインが進むモーリタニアは砂漠の国です。
砂漠の夜は想像よりも冷え、体の熱を奪います。
言わば、防寒着は自分自身を守るためにも必須です。
そしてその防寒着、防風着とも言いましょうか、汚れてもいいし、最悪捨てても良いものを用意しましょう。
アイアントレインは内陸から沿岸分にかけて鉄鉱石を運んでおり、その鉄鉱石を運ぶ部分に我々物好きな旅行者は乗るわけ(なぜなら無料)ですから、当然何時間も乗っていれば自然と鉄鉱石があちらこちらに付き、身体や衣服は黒い鉱石まみれになります。
そして、時間については、全く持って予想はできないと思ってください。
現地について、周りの人に聞くしかありません。
僕たちも12時間以上待ちました。笑
どうか心に余裕を持って、立ち向かってください。
実際にアイアントレインに乗った感想
2017年の2月頃、僕は妻とアイアントレインに乗りました。
たくさんの旅人の方のブログを拝見し、乗車できる町である「シュム」というなにもないただの村みたいな場所で十数時間ただただ列車が来るのを待っていた覚えがあります。
アイアントレインに時刻表や駅舎などなく、ただただ、より内陸の町から来るであろう列車を待つ時間がそこには流れているだけです。
我々が乗れた日は、夜中の午前2時頃に列車がやってきました。
人によっては、”昼頃に来た!”とか”夜8時ぐらい!”とブログによって時間が違い、現地の人も確かな情報は持っていないようでした。
そして、
途方もない時間を待った末に実際にアイアントレインに乗った感想として言えることは、
最高でした!
の一言です。
列車に乗れるのかどうかもわからない時間を経て、深夜の列車に乗り込み、鉄鉱石にまみれながら朝を迎え、車両の上から素晴らしい景色と風に吹かれたとき、
「これでこそ冒険だ〜!!」
と心から旅する喜びが湧きあげてきたのを覚えています。
アイアントレインに乗るまでのただただ地元の人にまみれて過ごす時間や夜中までいつ来るのかわからない電車をドキドキしながら待つ時間
アドレナリン全開で到着した列車に乗る瞬間
真っ暗な中鉄鉱石の中でテントに包まり夜を越えた後に見た朝日
ただただ悠然と進む列車の車両の上で目にした景色
その全てがアイアントレインでしか味わうことのできないものでした。
大変なことも含めて、楽しいと思える世界がそこにはあります。
さいごに
旅人の心を掴んで離さない「アイアントレイン」いかがでしょうか?
心躍るほどのワクワクやドキドキは、いくら旅を続けてもそうそう出会えるものではありません。
だからこそ是非、このアイアントレインが放つ冒険感を、旅に飽きつつあるあなたにも体験してほしいと思います!
真っ黒になりながら、自由の風に吹かれて行きましょう!
ご愛読ありがとうございました!